借りぐらしのアリエッティを見て、疑問に思ったこと

借りぐらしのアリエッティを見た。おもしろかった。ただ、疑問に思ったことがあった。以下、見ていない方にはネタバレになるかもしれない。映画を見た人が読むことを前提に書く。



疑問に思ったのは、アリエッティの家族の描き方について。なんかしっくり来ない部分が多かった。それについての説明が映画の中ではっきりとされていなかったので、どうにももやもやしている。

参考:借りぐらしのアリエッティ −キャラクター&声の出演者
http://www.karigurashi.jp/film_cast.html

まず、アリエッティアリエッティの両親が似ていないのはなんでだろう? 映画を見てしばらくして、「あれ、この親子似てない」、と感じ、どうしてそう感じたのかを考えてみたのだけど、まず顕著なのは髪色。父はちょっとブラウンの入ったような灰色。母は黒髪。アリエッティは、赤毛といってもいいだろう、明るめのブラウン。

それに気づくと、どうも、父とも母とも、アリエッティの顔立ちが似ていないんじゃないか、っていう気がしてきてしまった。これは、単に惑わされているだけかもしれない。私が、キャラクター造形をうまく読み取れていないだけかも、という気もしてくる。多分に主観の問題であるので、他の意見も聞きたいところ。


つぎに、違和感があったのは、母の老け具合。ほうれいせんがくっきり描かれていて、痩せた体つきがさらに老け感をアップさせているように感じた。私には、父より母のほうが年が上のように見えたのだけれど。そこに意味はあるのか、ないのかはおいといて、とにかく、母親のキャラクター造形には違和感を感じた。だって、アリエッティの母に、ほうれいせんを描く必要ってある? 描かない必要もないけれど。


さらに、アリエッティの父母の、ステレオタイプな感じにも多少の違和感。口数が少なく外に出て一家を支える父親、口うるさく心配性な専業主婦の母親という役割を振られていた二人だが、自らが進んでその役割を担っているようにも見えた。カントクから役を振られたから演じているのではなくて、メタは関係ないところで、あの世界のなかで、父と母は、自ら父であろう、母であろうと、自覚的に動いているように感じた。それらしくあるため、努力をしている感じ。


総合すると、私には、アリエッティの家族は、擬似家族のように見えてしょうがなかった。擬似家族というと大げさかもしれないけれど、血縁のない家族、血縁以外で結ばれた家族像、というように受け取れた。というか、家族というのは血縁関係ではないもので構成される、という強いメッセージを読み取れる気がしてきた。

そういう風に考えると、翔の家族構成との対比も見えてくるような気がする。冒頭から翔は、「一週間だけ」の滞在ということを宣言していて、保護者である伯母さんとはどこか他人行儀だし、家政婦のハルさんは完全に家政婦さんで、家族という感じは全くない。伯母さんとの食事シーンで、翔の両親が離婚していること、自分の生死がかかった手術の直前に、母親は仕事で海外にいるということも、はっきりと明示される。

仮に、アリエッティの家族が擬似家族だとして、翔の家族が血縁はあるが家族とは言えない状態であるということを強調した描き方なのであるとすれば、これは対比だととれるんじゃないかな。そうだとしても、別にどうもしないけど、ちょっとすっきりするような気がしないでもない。


たぶん、正解というのはないのだろうけど、なんか違和感がある感じというのは落ち着かない。ほかの方の感想などを探して読みつつ、自分なりに考えたいと思う。