本屋の棚に眠る本

本屋の、人が少ない一角にある本を眺めていて、一体ここにある本の存在価値とはなんなのだろうか、と思ってしまった。近所にある郊外型大型駐車場併設書店で、普段行かないエリアをぶらぶらしていたときに、そう思った。

もう数年、ずっとその棚にあると思われる、重めで高めの美術書。誰かが本を手に取ったときか、書店に並べられるまでの間に、背表紙がちょっと折れてしまっている、落語の本。仏教の本。プログラミングの本。タイトルが似すぎていて違いがわからない語学の本、ビジネス書、自己啓発本……。

たぶん、それらの本は、売れるのを待っているのではないんじゃないかな、と思った。売ってやろうと思って並べられているとは思えないたたずまいだった。

それらの本を眺めながら、私は、『到底売れるとは思ってないけれど本棚に並んでいると守備範囲が広く見える本、っぽいな』と思った。書店が、自分の姿を大きく見せようとして置いている本みたい。そんなわけはないんだろうけども。

よく考えたら、書店においてある本の、大部分が売れない。本は毎日入れ替わらない。売れる本より、売れずにそのまま次の日を迎える本のほうが多い。売れないことが普通な場所、それが本屋だ。

そんなことを考えて、私は何も買わずに店を出た。ただそれだけ。